人口減少・少子高齢化の急激な進展に伴い、医療や介護を必要とする人が増える中、全世代に対応した「地域包括ケアシステム」を推進する杵築市において市立病院としての役割はますます重要となっています。
病院では、保健・医療・福祉の一体化を基本理念に掲げ、医師の診療をはじめ、日々さまざまな専門職が、個々の患者さまへの治療や看護等に携わっています。しかし、それだけでなく、それぞれの専門職が協働し、市民の皆さんに、健康の保持・増進のためのサービスを提供したいと考え、平成29年6月から、医師・看護師をはじめとした専門職による「健康出前講座」を本格的に開始しました。
高齢者教室「薬の飲み方について」
01 地域住民向け講座
主に高齢者サロンや公民館で、市役所や杵築市社会福祉協議会、住民自治協議会等と連携して、高齢者に関心のある認知症予防、介護予防、薬に関する悩みなど様々なテーマで講座を開催しています。
企業向け講座「糖尿病について学びましょう」
02 職域向け講座
従業員等の健康づくりに積極的に取り組む企業や福祉施設等に赴き、その取り組みを支援することにより、働く世代の健康づくりの促進を図っています。生活習慣病予防、がん検診、感染症対策、介護技術・移乗動作の介助指導など、企業や職種の特性に即した内容で行っています。
中学生向けがん授業「がんを学び、がんで学ぶ」
03 教育機関向け講座
「がん授業」
若い世代からがんに関する正しい知識を身につけることにより、「がんに負けない健康づくり」に積極的に取り組むきっかけとなるほか、がんに関する正しい知識を子どもたちが学ぶことにより、親世代へのがん対策に関する啓発効果も期待されることから、がんの専門家(医師)による授業を実施し、予防、早期発見、医療など、がんに関する正しい知識の普及啓発を図ることを目的とし、2019年度より中学校や高校で開催しています。
こども園での「エピペン講習会」
「エピペン講習会」
近年、食物アレルギーがあるこども達への配慮について社会の関心が高くなっています。当院はアレル ギー診療を専門にしており、小児のアレルギー疾患の治療と予防的指導を積極的におこなっています。そのひとつに、食物によるアナフィラキシーの対応 ができるようにエピペンの使い方を含めた講習会を実施しています。この講習は、学校や幼稚園・保育園 の職員とエピペンを携帯する児童の家族が対象です。
行政と連携した「健康チェック」
04 健康チェック
通常の出前講座にとどまらず、健康長寿の延伸に向け、市民の皆さんの健康づくりをサポートする健康チェックを推進しています。気軽に相談できる機会として食後血糖測定、簡易検査(骨密度測定、動脈硬化測定)、平衡機能検査などを行い、検査結果をもとに市役所の保健師さんの協力を得て健康相談を行っています。生活習慣病予防から介護予防まで、幅広い世代に向けて体験型の啓発活動にも力を入れています。
出前講座を市内全域で実施したことによって、職員も多くのことを知り・学び、参加者の皆さんには病院やスタッフが身近になり、疾病予防や健康づくりのきっかけづくりにつながったと思います。
市立病院としての存在は、職員が思う以上に市民の皆さんに知られていませんでした。特に杵築地域では当院が市立病院であることを知らない方も数多くおられ、市町村合併の影響もあり病院の認知度は山香地域に限定されていました。ところが、出前講座が縁やきっかけになり、後日に診療科や検査内容などについての問合せがあるケースも少なくありません。
出前講座は地元公民館や学校等、利用者の日常生活範囲の場所で行われます。利用者が身構えずリラックスした中で講座に参加できることで、職員との敷居が低くなり対話が生まれ病院が身近に感じられるようになったものと思われます。