杵築市立山香病院

チーム医療

チーム医療TEAM MEDICAL

チーム医療について

当院ではトータルケア委員会と言う新しい発想の活動を行っています。
近年、医療は専門分化し、医療者は病気にのみ専心する中で、患者の尊厳が脅かされる事態に至ることが危惧されます。ケアチームの活動も同様で、各々が得意なケアに専念し、患者の全体像が捉え難くなる可能性を憂慮しました。現在、ケアチームの情報を共有・統合し、相互に補完し合うことで、より良いケアの実現を模索しています。
当院の全てのケアチームは、医師を含めた多職種で構成されています。以前から活動していた褥瘡対策、栄養、摂食嚥下、排泄(排尿・排便)ケアチームに加え、脳卒中、骨粗鬆症リエゾン(O L S)、睡眠時無呼吸症候群(S A S)、認知症、緩和(がん、非がん)ケア、ポリファーマシー対策、心不全チームが新たに加わり厚みを増しました。
定時でケアチームの代表が集合し、それぞれが活動報告を行い、共有できる症例の検討を行っています。症例検討では、各ケアチームからアセスメントが示され、最も患者に相応しいケアの方針が立てられ、ケアチームが連動して活動しています。
トータルケアとして関わことで、病状の改善だけではなく、生活の質の向上を目指し、職種、ケアチームの壁を越えた有益な活動を委員会の目標としています。

栄養チーム

ポリファーマシー委員会
Nutrition =栄養、Support =サポート、Team =チームの略です。
栄養サポートチーム(NST)とは、入院中の患者様の栄養管理をサポートするチームです。
栄養の状態を評価して低栄養や栄養管理が必要とする患者さまに、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、リハビリスタッフ、管理栄養士等の多職種が関わります。当院のNST活動は平成16年10月より活動を開始しました。
週に1回、回診とカンファレンスを実施しています。主治医、多職種のNSTメンバーと協力しながら、適切な栄養管理方法の提案など患者さまの栄養サポートをさせていただきます。

褥瘡(じょくそう)対策チーム

褥瘡(じょくそう)対策チーム
上記のチーム目標を掲げ、委員会を月に1回開催し、褥瘡発生率、持ち込み件数、スキン-テア発生件数、マットレスの使用状況および評価を行っています。 褥瘡を有する患者に対しては、委員会内で経過の情報共有、対策の検討を行い、毎週火曜日の回診時には栄養、排泄、ポジショニング、処置内容の評価を行い、直接病棟スタッフへ指導を行っています。前年度から回診対象を「褥瘡好発部位の持続する発赤(d1)」とし、早期に対策が実施でき、治癒率も向上しています。 今後も褥瘡を有する患者に対してトータルケア委員会(NST、排泄、認知症、骨粗鬆症、摂食嚥下など)と協力してチーム医療連携を図り、適切なケアを検討し、褥瘡の重症化予防と早期治療に取り組んでいきます。 また、スキン-テアについては、当院の発生患者の特徴と傾向を分析し、個々に応じたスキン-テア予防のアセスメントと予防対策が行える様に取り組んでいく予定です。

メンバー構成

専任医師・専任看護師・専任栄養管理士・リハビリテーション部門

目標

1. 褥瘡予防を図るとともに、持込および新規発生した褥瘡の早期治癒を目指す

2. スキン-テアリスクを有する患者および発生患者への予防・再発防止を目指す

摂食嚥下(せっしょくえんげ)チーム

「口から食べる」を目標に活動しています。

脳血管障害・オーラルフレイルなどの様々な要因によって、食べたり飲んだりする事が上手く出来なくなる摂食嚥下(せっしょくえんげ)障害を抱える方がいらっしゃいます。当院では、摂食嚥下障害患者へ多職種から成るチームで介入し治療を行っています。摂食嚥下障害が疑われる場合は、障害の程度を正確に把握するために、嚥下造影検査(VF検査)や嚥下内視鏡検査(VE検査)を実施しています。これらの検査結果を基に摂食嚥下リハビリテーションやケア内容を検討し、チームでアプローチを行っていきます。

メンバー構成

医師・看護師・言語聴覚士・理学療法士・作業療法士・管理栄養士・放射線技師

摂食嚥下とは

①食べ物を認識して口に取り込む
②口の中で食べ物を飲み込みやすい形にする
③口からノドへ送り込む
④ノドから食道・胃へ送り込む
この一連の流れを 摂食(せっしょく)嚥下(えんげ) といいます。
その流れのいずれかが障害され、飲食物をスムーズに飲み込めなくなる事を摂食嚥下障害といいます。
「食事の量が減った」「最近よくむせる」「飲み込みにくい」などは嚥下機能低下のサインです。
このサインを放っておくと誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。

誤嚥性肺炎とは

主に飲食物や唾液等が細菌と一緒に気管支や肺に入る事(誤嚥)で発症する疾患です。高齢者、脳卒中の後遺症やパーキンソン病などの神経疾患を抱えている方に多いのが特徴です。

オーラルフレイルとは

オーラルは口腔、フレイルは虚弱という意味です。噛んだり(咀嚼)、飲み込んだり(嚥下)、話したり(発声発語)するために必要な口腔機能が衰える事を言います。このオーラルフレイルも摂食嚥下障害の大きな要因となります。オーラルフレイルを予防する事も我々の大切な仕事です。

VF検査(嚥下造影検査)

レントゲン装置を使用し、透視下で造影剤が含まれた食物を食べていただきます。
胃の検査と似た方法で口やノドの動きを観察し、食物が食道ではなく気管に入っていないか(誤嚥していないか)確認します。

VF検査画像

VF検査画像

VF検査場面

VF検査場面

VE検査(嚥下内視鏡検査)

鼻から内視鏡をノドまで入れて、ノドの部分を直視しながら食物を食べているところを観察します。
VF検査と同様に食物が食道ではなく気管に入っていないか(誤嚥していないか)確認します。

VE検査画像

VE検査画像

VE検査場面

VE検査場面

研修会の開催

委員会を立ち上げてから、当院職員や近隣施設の職員に向けて、摂食嚥下に関する研修会を開催してきました。
※現在、コロナ禍の影響もあり院外へ向けた研修会は行っていません。

主な内容

嚥下障害・口腔ケア・食事姿勢・トロミのつけかた・VFVE検査

排泄ケアチーム

患者さんの尊厳を守り、快適な排泄をめざしています。排泄チームは排尿ケアと排便ケアの2つのチームで構成しています。
排尿ケアチームでは週1回の回診とカンファレンスを行い、尿道カテーテル(膀胱から直接体の外に尿を排出するための管)の留置期間の短縮、排尿の早期自立に向けています。
排便ケアチームでは同じく週1回の回診とカンファレンスを行い、下痢や便秘の方への支援、褥瘡チームやNSTなど他のチームとの連携に取り組んでいます。
看護師は「皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)」を配置しており、より専門的かつチーム横断的な医療・ケアを提供できる体制にしています。さらには、大分県排泄リハビリテーション・ケア研究会の世話人をはじめとして職種、職域を超えて研鑽、情報共有を図り、県内の排泄リハ・ケアの発展、充実に努めています。

メンバー構成

排尿ケアチーム:泌尿器科医師、看護師(WOCナース)、管理栄養士、理学療法士、作業療法士
排便ケアチーム:消化器外科医師、看護師(WOCナース)、管理栄養士、作業療法士

活動の成果

排尿ケアチームでは、術後や急性期治療の際に留置した尿道カテーテルをできるだけ速やかに抜いて、患者さんの自力での排尿を促進しています。また、残尿測定機器(リリアムα200)を用いてその人の尿が溜まるタイミングでトイレでの排尿習慣を取り戻すことに取り組んでいます。

排便ケアチームでは、心地よい排便をめざし下剤や下痢止めなどのお薬の使い方、食事や水分摂取などの提案を行っています。専門職が様々な角度から分析し対策をたてることで、褥瘡や肛門周囲の皮膚のただれなどの問題の解決をはかっています。

骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)チーム

「骨粗鬆症」とは骨の量が減り、強度が低下し骨折を起こしやすい状態のことをいいます。また、骨折の治療が終わっても骨粗鬆症への対応をしていかなくては再度骨折する二次骨折をきたします。さらには歩行や立すわりが困難になるロコモティヴシンドロームの要因となり寝たきりなどの介護を要すリスクを招きます。
そこで、当院では多職種で連携して運動、栄養、薬剤指導を行い、骨粗鬆症の治療に取り組んでいます。骨粗鬆症を早期に発見し、早期に治療介入することで骨折予防を図るとともに、治療の継続を支え二次骨折を防ぎます。地域の皆様のおひとりおひとりの状態、生活にあわせて適切な時期に適切な治療を提供し健康寿命の延伸を目指しています。骨粗鬆症マネジャーを配置していますのでお気軽に相談ください。

メンバー構成

医師、外来看護師、病棟看護師、放射線技師(骨粗鬆症マネジャー)、検査技師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、医事課

活動内容

定例会:1回/月
骨粗鬆症の診断と治療は整形外科だけでは抱えきれないのが現状で、当院も常勤の整形外科がいないため総合診療科や内科で診療支援等にて実施されたDEXAデータをもとに治療介入状況や未治療患者さんの追跡、新規入院患者さんに対する骨折注意喚起目的の検査提案、入院患者さんの骨折事例検討、定期注射剤実施状況等を協議しています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)チーム

睡眠時無呼吸症候群(SAS)チーム
当院では睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)の診断のため、自宅で行う簡易検査、一泊入院を必要とする精密検査(終夜睡眠ポリグラフィ:PSG)を行い、治療(経鼻的持続陽圧呼吸療法:CPAP療法など)に結びつけています。SASは高血圧、糖尿病、脳卒中、虚血性心疾患などの生活習慣病のリスクであることに加え、交通事故をはじめとする労働災害のリスクであることが近年明らかにされています。SASの認知度は以前より高くなったとは思いますが、自分がSASだと自覚している方が少なく、潜在的SAS患者が放置されているのが現状です。
2020年4月よりチームを立ち上げ、SASの診断・治療について月一回の会議を開催しています。 チームではSASの早期診断・早期治療を必要とする対象者を抽出するとともに、CPAP治療者の使用状況や治療効果などを管理し、コンプライアンスが低下した方にはチームで介入し治療継続ヘと繋げています。また、出前講座などでSASの啓発活動も行っています。

メンバー構成

医師(総合診療内科、循環器内科)、臨床検査技師、看護師、管理栄養士、事務部

CPAP治療されている方の中には、コンプライアンスが低下し継続が難しい方がいます。その場合、検査技師が医師と患者さんの仲介役として面談をし、トラブルの聞き取りや治療の必要性を説明するなどして対処の手助けをしています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)チーム

認知症ケア委員会

Leave no one behind【誰一人取り残さない】ケア

2020年の認知症者は602万人、2025年は730万人になると推計され、大きな社会問題として周知されています。国は2004年に「痴呆」から「認知症」へと用語を変更し、【共生】と【予防】を掲げ、認知症施策を進めています。それに則り当院も認知症ケアに取り組んでいます。認知症を有する方が、安心して過ごせる病院を目指し、2016年に発足しました。当初は、月1回の委員会を、2021年度から、月2回に変更し、学習会、事例検討、活動内容の検討に取り組んでいます。病棟毎で日々実践した認知症ケアは、医師との事例検討を重ね、環境調整や転倒予防、内服調整等に努めています。2018年にひと病棟で取り組み始めた院内デイが、メンバーの働きかけもあり、現在では病院全体で取り組める様になりました。(表1)事例検討では、排尿ケアや睡眠確保が認知症ケアの課題であり、患者個々に応じたケアを積み重ねています。また病状や内服等さまざまな要因が絡み合っていることから、症状の観察項目や薬剤の服用時間等をスタッフで共有するシステムを構築中です。
今後はよりタイムリーな認知症ケアができるよう、チームでの病棟回診を実施します。より良い認知症ケアが実践できるよう、日々研鑽に努めます。

メンバー構成

医師・認知症ケア上級専門士、認知症ケア専門士、専任看護師

緩和ケアチーム

緩和ケアチームについて

緩和ケアとは、病を抱える患者さんの体や心のつらさを和らげ、生活やその人らしさを大切にする考え方です。
現在は患者さんがどのように生活していくかという「療養生活の質」も治療と同じように重要視されています。
治療と並行して受ける緩和ケアは、主に緩和ケアチームが担当します。
緩和ケアチームが所属する緩和ケア委員会は、様々な職種(医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、栄養士、リハビリテーション等)で構成されている委員会です。

活動内容

緩和ケアチーム会議

  • 非がん・がんチームでの事例や抄読会、回診の報告を行なう
  • 院内外での緩和ケアに関する事例を検討・協議する
  • 院内へ緩和ケアへの認識の底上げを行なう

がんチームカンファレンス

  • 当院のがん患者の緩和ケア事例カンファレンス
  • 入院中のがん患者への回診

非がんチームカンファレンス

  • 当院の臓器不全や高齢患者の緩和ケア事例カンファレンス
  • 臓器不全や高齢者の緩和ケアの研究・報告等の勉強会

スタッフ構成

医師4名、看護師12名
その他9名/薬剤師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、MSW、事務、宗教師(浄土真宗)

緩和ケア委員会の課題

症例の事例検証体制

医局カンファレンスや新患カンファレンス等での対象症例の情報の入手・報告

院内での緩和ケアの考え方・クオリティの平均化

すべての職員が緩和ケアに対しての知識を平均化して、職員ごとの考え方のばらつきやリスクを防ぐ

ポリファーマシー委員会

ポリファーマシー委員会

ポリファーマシーとは、「複数」を意味する「poly」と「調剤」を意味する「pharmacy」からなる作られた言葉です。
単に服用する薬剤数が多いことではなく、患者さんに生じる好ましくない、あるいは意図しない徴候、症状または病気、副作用などが起きたり、きちんと薬が飲めなくなったりする問題につながる状態を言います。
併用する薬が何剤以上でポリファーマシーであるという明確な定義はありません。年齢を重ねると生理的な変化や複数の病気を持ち、病気に対して複数の医療機関・診療科を受診し薬が処方され薬の種類が多くなってしまうことがあります。
薬物有害事象の回避、服薬アドヒアランスの改善、適切な医療の提供を目指し、個々の特徴に配慮し、問題を解決することがポリファーマシー委員会の目的です。

※薬物有害事象…薬との因果関係がはっきりしないものを含め、薬を投与された患者さんに生じる好ましくない、あるいは意図しない徴候、症状または病気、副作用などが生じる出来事

※服薬アドヒアランス…患者さんが自分の病気を理解し、医師の治療方針に積極的に協力し薬を用いた治療を受けること

心不全チーム

心不全チーム
生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患の増加や高齢化による高血圧や弁膜症患者の増加に伴い心不全患者は増加しています。2030年には心不全患者が130万人を超えることが予測されています。
心不全は、一度の治療で治る病気ではありません。入退院を繰り返すことも多い病気です。
そして、退院後も薬を飲み、心臓に負担がかからない生活を心がけ、病気と上手につきあう事が大切になります。
心不全患者さんが、病気とつきあいながら、自分らしく生活が送れるようにサポートするため、当院でも2021年に心不全チームが結成されました。医師、看護師、薬剤師、リハビリ、臨牀検査技師、管理栄養士と多職種で関わることで様々な方向から回復の支援を行なっています。
毎週月曜日にカンファレンスを行い、心不全についての知識を深め、心不全で入院をしている患者さんのアウトカムを改善し、QOLを高めるための活動を行なっています。